仰臥位低血圧症候群とは?その原因と症状、対処法などを整理して説明しています。帝王切開をする予定の妊婦さんは要注意です …
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第5回 仰向けで寝るなら知らないと損!
第8回 仰臥位の全て【徹底解説】
第10回 横向き枕で失敗しない3つの選び方
第11回 横向きで寝るメリットとデメリットまとめ【徹底解説】
第15回 うつ伏せ枕で失敗しない選び方
第16回 うつぶせ寝は赤ちゃんと大人で違う?【正しいうつ伏せ寝】
仰臥位低血圧症候群とは、主に妊娠中期から後期にかけて仰臥位(仰向け)で横になった際に、貧血症状に近いものを感じてしまいます。
放っておくと胎児にも影響するなど、デリケートな妊娠末期には知っておいて損はありません。
目次はこちら
仰臥位(ぎょうがい)とは
仰臥位とは仰向けのことです。
ヒトの解剖学やその応用である介護・看護学、スポーツ医学やその他分野(人間工学など)では体位の一般的な表現方法として、仰向けの事を仰臥位(supine position)または背臥位(はいがい;dorsal position)と呼んでいます。
仰臥位は、重心が低く安定し、最もエネルギー効率の良い体位だと呼ばれ、他の体位に比べ(横向き、うつ伏せ)最もリラックスできる体位だと呼ばれています。仰臥位には、デメリットもあります。
仰臥位は、頭部・体幹・四肢の各部が心臓とほぼ同じ高さになるため、全身の血流量が上昇してしまい心臓の負荷を上げてしまいます。心臓の弱い人、弱い状態での仰臥位は注意が必要です。今日、紹介する仰臥位低血圧症候群にも大きく関係します。
仰臥位について詳しくは下記の記事で説明しています。↓
仰臥位低血圧症候群とは
仰臥位低血圧症候群(SHS*)とは、仰臥位(仰向け)で横になった際に感じる貧血症状に近い低血圧状態です。
妊娠末期の妊婦や下腹部腹腔内腫瘤の患者が仰臥位になった際に感じやすいと言われています。
妊婦の場合で言うと、お腹の大きくなった妊娠中期から後期に仰向けで寝ていると、胎児や羊水で増大した子宮が太い血管(下大静脈)を圧迫し、血流が急激に減ります。その結果、血圧が著しく下がり、呼吸困難やめまい、吐き気といった仰臥位低血圧症候群の症状が現れることがあります。
*)SHS;Supine position Hypotension Syndromeの略
仰臥位低血圧症候群の原因
仰臥位(仰向け)特有の血流悪化が原因です。
仰臥位低血圧症候群とは、母体の下腹部付近に存在する腹腔動脈と下大静脈の上に胎児が乗っかり、血管を圧迫します。静脈はそもそも血流の勢いは弱いため、さらに血流が低下してしまいます。
ようは、母体の心臓に血液が戻らなくなってしまうのです。すると、心臓への負担が増えるだけでなく、心臓から血液を送り出せなくなるので、全身に送る血液が一気に減ってしまうことで、血圧が低下し、体は酸素不足に陥ります。
その結果、悪心・嘔吐、生あくびなどの仰臥位低血圧症候群になるのです。
仰臥位低血圧症候群の症状
仰臥位低血圧症候群の代表的な症状を紹介します。
- 頻脈
- 悪心(吐き気)・嘔吐
- 生あくび
- めまいや頭痛
- 息切れ
- 倦怠感
- 顔色が悪くなる(顔面蒼白)
- 冷や汗
仰臥位低血圧症候群の症状は、側臥位(横向き)になるなどの体位変換、または分娩後には症状が解消する場合が多いのが特徴です。仰臥位低血圧症候群が続いてしまうと、意識を失うだけでなく、お腹の中の赤ちゃんも低酸素状態となってしまうため、危険な状態となってしまいます。
仰臥位低血圧症候群の対処法
仰臥位低血圧症候群の対処法は左側臥位(左を下)で横になることです。
仰臥位低血圧症候群は、あくまで体位(仰臥位)を原因とした一時的な血流悪化による症状で、体位変換または分娩後には、仰臥位低血圧症候群の症状は消失します。
多くの場合、仰臥位が直接的な原因となっているため、左側臥位とすることで、圧迫されていた下大静脈が解放されます。すると、右心房への静脈還流量や心拍出量も回復するので血圧も間もなく安定を取り戻します。
仰臥位低血圧症候群の予防
左側臥位で横になるのが仰臥位低血圧症候群の予防法です。
妊娠後期になると、仰向け(仰臥位)では仰臥位低血圧症候群になりがちです。そのため、左側臥位(左を下に)で横になるよう心がけることが予防となります。
実は、動脈と静脈は重なっているのではなく、動脈が左、静脈が右にあります。左側臥位にすると、胎児の体重が左にある動脈の方に乗っかります。その結果、静脈の方にかかる比重が少なくなり、血流が良くなることで仰臥位低血圧症候群の予防に繋がります。動脈は血液の流れが強いので、心配する必要はありません。
妊婦が左側臥位で寝るように勧められるメカニズムは仰臥位低血圧症候群と深い関係があったのでした。
仰臥位低血圧症候群は帝王切開前に注意
妊娠末期の妊婦が帝王切開の準備のため腰椎麻酔をおこなった後に仰臥位低血圧症候群が生じやすいと言われています。
突然、ショック状態となってしまい貧血のようにな症状を感じてしまいますが、焦らず体位を仰臥位から左側臥位にすることで右心系に血液が戻ってくるため、仰臥位低血圧症候群はすぐに回復します。
まとめ
仰臥位低血圧症候群という言葉は聞いたことなくても、妊娠末期の妊婦さんなら経験したことがあるかもしれません。
放っておくと、胎児への影響もあるため、速やかに体位を仰臥位(仰向け)から左側臥位(左を下)に変えましょう。妊娠経験の有無に関わらず、この時期は出来るだけ体調の変化には敏感でありたいものです。
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あとがき
今まで何となく感じてけど、放っておいた人も多いはず。
仰臥位低血圧症候群は、気のせいなのかなと自覚しにくい妊婦さんもいるので、少しの変化でも気になったら看護師や医師に相談する事をおすすめしますっ